人が何かを忘れる時、記憶はどのように薄れ消えていくのでしょうか。多くの場合忘却の過程は意識もされません。私たちの日常生活は思い出す機会すらないまま処理されていく膨大な残骸の上に成立しています。 記憶の水面下に静かに沈んでいくありふれたイメージの数々を拾い上げ、向きを変え、そっと組み立て直し、置く場所を変える。その小さな行為の集積により、顧みられることのなかった日々の断片が新たな風景として突如立ち現れることがあります。それは時にダイナミックに、時にささやかに、世界の在り様を変えてくれるのです。その瞬間を何度でも見たくて私はまだフラフラと歩いています。