作品のコンセプトは横に置いて、私が普段何を考えながら絵を描いているのかと言えば、それは「絵の具って綺麗だな」という事。今回の展示は私の作品制作の根幹である絵の具という物質にフォーカスし、二つのシリーズを展示します。 この二つのシリーズは共に絵の具の質感の美しい所だけを固めて作品化したいという思いで制作しています。また自分の頭の中にある物を描くと言うより、自分が見たい物を描くと言う点も共通しています。絵の具の色と質感に強い執着が有りそこにいろんな物を込めている。込めているというか、勝手に入り込んで来るのを誘っているという感覚。 人の本能を刺激する様な何かが絵の具に宿るのを誘い出す行いが、私にとっての絵を描くという行為です。絵画は平面に置かれた絵の具が、絵の具のままでありながら同時に描かれたイメージに見えると言うイリュージョンがあります。絵の具という物質が作者の制作意図と結託して絵画としか言えない異質な物に変質する。とても単純な事ですが、解像度を上げてまじまじと見ると途方もなく複雑な変化です。 絵画という物は何て魅力的なのだろう。私が普段作っている絵画の中から良いと思うものを会場に並べてみます。